中東の中でも治安がズバ抜けていて、個性的な建物が多いアラブ首長国連邦では、映画のロケ地になることが多くなってきました。
“多くなった”と書きましたが、特にアラブ首長国連邦のアブダビなどは昔、宗教的観点からかどうかは分かりませんが“映画撮影”の許可<Permission>がおりませんでした。
アブダビは原油の値段も下がり、現在はムハンマド皇太子が病がちなカリファ首長さんに代わって国を動かしているということで、映画のロケ地になると国のPRにもなりますし、莫大な撮影許可料も入るということでロケも可能になってきています。
とにかく、ドバイもアブダビも街がダイナミックですから映画のロケ地には映えますよね。今回はドバイとアブダビがロケ地となった映画をご案内致します。
ミッション イン ポッシブル・ゴーストプロトコル
トムクルーズ主演の大人気映画「ミッション イン ポッシブル」のシリーズ4作目<ゴーストプロトコル>はドバイがメインの舞台となっています。
<バージュカリファ>
トムクルーズ演じるイーサン ハント率いるIMFチームが、ロシアのクレムリンから世界的な核戦争を目論むヘンドリクスが盗んで持つ“核兵器誘導置”とその制御装置の“発射コード”を持つ女殺し屋のモローがドバイのバージュカリファにあるホテルで取引するという情報を得てドバイへ向かうという設定。
映画が始まって“1時間24分後”にイーサンが運転する4WDが砂漠の道路を走り、高層ビル群が登場するところからドバイのシーンのスタートです。(メインのロケ地ですが、登場するのは結構あとの方です)
映画の中でイーサン ハントは「ドバイの“ブルジュ ホテル”で取引が行われる」と言っていますが、実際にそのような名前のホテルはドバイにはありません。
実際にバージュカリファにあるホテルは「アルマーニ ドバイ」で映画の中では100階以上にある設定になっていますが、アルマーニドバイはバージュカリファの低層階にあります。(確か一番高い部屋で38階くらい)
アルマーニの部屋は僕も実際にすべてのカテゴリーを見ていますが、映画に出てくる部屋は全然雰囲気が違いますので、あくまでも”ロケ用の部屋”でアルマーニの部屋は使っていないようです。(たぶん・・・ですけど。そもそも高層階に部屋はありませんしね)
IMFのチーム4人がホテルに入ってくるシーンと、発射コードを手に入れたヘンドリクスがエレベーターでロビー階におり、20段ほどのエスカレーターを滑り降りて出口から逃げるシーンの撮影はこのアルマーニホテルの裏側部分を使っています。(普段は使っていない出入り口です)
世界一高い位置にあるレストランの122階「At.Mosphere<アトモスフィア>」のエレベーター乗り口付近がこの撮影場所ですので、ここを見たい方はアルマーニで宿泊するか、At.Mosphereで有名なアフタヌーンティーを予約しましょう。
”うわさ”では、トムクルーズはこの撮影でドバイでは通称7星ホテルの「バージュアルアラブ」に泊っていたそうです。(ホテルのスタッフに直接聞いたわけではないので、限定はできませんけどね)
<ドバイクリーク>
制御コードを盗まれたイーサンは情報を得るためにドバイの武器商人と会うのが、ドバイのクリーク沿いに停泊するイランからの運搬船。デイラ地区のクリーク沿いにはいつも沢山のイラン船が停まっていますので、その雰囲気は映画のままです。
<ジュメイラ ザビールサライホテル>
逃げたヘンドリクスがインドのムンバイにいるという情報を得たイーサン達のチームはそれを追ってムンバイに行く。 そこでインドのメディア王ブリッジ ナスの開催するパーティー会場でまた取引が行われるのだが、このパーティー会場が実際はムンバイではなく、ドバイのパームジュメイラにある「ジュメイラ ザビール サライ ホテル」のエントランス部分でロケが行われています。
エントランス部分にある柱の形が特徴的で、僕も実際に仕事でこのホテルに行ったとき「あれ、この柱は何かの映画で見たなぁ・・・」と思って、ググったところゴーストプロトコルの舞台と書かれていました。
おっ、やっぱそうだ! それを知ったときは何か自分がもの凄く“映画ツウ”になった気分でございました。
昔、ロサンゼルスに行ったときにプリティウーマンやゴーストバスターズの舞台を見て、映画好きの僕はえらく感動したものですが、前から知っているこのドバイの地が映画の中で実際に見れたのはまた違ったうれしさでございます。(プリティウーマンって・・・。古くてごめんなさい)
ジオストーム
ジェラルド バトラーが主演のSF災害映画。人工衛星のネットワークを利用して天気をコントロールするというシステムを悪者が悪用して、世界中に嵐や雷などの大災害をもたらすという話し。(まとめすぎですか??)
映画の中でインドのムンバイやブラジルのリオデジャネイロなどの8都市がその被害に遭うのですが、その中の一つがドバイです。
バージュカリファの高層階でアラブ人達がビジネスミーティングをしているところ、人工的な嵐による大津波がドバイを襲い、その津波は陸から少し離れた位置にあるバージュカリファにも到達してタワーが倒れかける・・・と言う設定。(完全には倒れていません。斜めになってかろうじて立っています)
映画でドバイが出てくるのはその部分だけなので、決して“ドバイのロケ地”というわけではないのですが、ドバイのランドマーク的な存在の「バージュカリファ」が倒れかけるというショッキングな内容ですので、たぶんこのジオストームはドバイで上映はされていないと思います。
20年前、ドバイに住むガイドがシネマへアメリカ映画を見に行ったところ、キスシーンが始まろうとしている場面で“ブチッ!”と画面が違うシーンに飛んで「内容がまったく入ってこない!」と怒っていたのを思い出します。 今はどうか知りませんが、昔はキスシーンやベッドシーンはすべてカットされてたそうです。
なので、この昔はあまりアメリカ映画はドバイに上映されてなかった気がします。今はだいぶと寛容になっていると思うので、そこまでの明らか様の編集はしないと思うのですけどね。(それでもこのジオストームの内容では上映されないっすね)
ワイルドスピード・スカイミッション
2015年に上映されたワイルドスピードのシリーズ第7作「スカイミッション」はアブダビがロケ地で使用されました。
主役のヴィン ディーゼル演じるドミニクとその仲間達がマクラーレンなどのスーパーカー5台で“アブダビの7星ホテル”と称される「エミレーツパレス」に現れます。
アブダビの中心地にある超高層ビル群“ジュメイラタワーズ”の最上階に住む、ヨルダンの王子が手に入れたシステム(“ゴットアイ”と言います)を装着した2億円のスーパーカー・ライカン ハイパースポーツに装着されていました。
ドミニクのチームはヨルダンの王子が最上階で開くパーティーに潜り込んで、車に装着されているゴッドアイを取り戻そうとするが途中で見つかってしまい、ドミニクとポール ウォーカー演じるブライアン2人がその車に乗り込んで逃げようとするのですが、そこは最上階で逃げ場がない状態。
そこでドミニクは最高時速390kmのライカン ハイパースポーツ(世界に7台しかない)のアクセル全開でビルの窓に突っ込むと隣の高層ビルに向かって飛びます。(アンボビバボーの場面です)
見事、隣のビルに飛び込みましたが、ブレーキが利かなくなった状態になった車はさらに窓を突き破ってまたその隣のビルへ飛び込むというあり得ない内容。 あり得ない内容ではありますが、迫力満点のシーンです。(思わず、このシーンで「ヒャッハッー!」と叫んでしまいます)
最初のビルの窓に向けて突っ込むシーンで、アクセル全開の時ブライアンがドミニクに「ドム、車は飛べない!」と叫ぶが、時すでにおそしで見事空を飛ぶスーパーカー。凄いですよ、これを考えた人は。
その場面がCGとはいえ、あのアブダビがこの内容に対して撮影許可を出したというのが驚きです。10年前じゃ、絶対に許可は出なかったでしょう。
スターウォーズ・フォースの覚醒
スターウォーズのロケ地としては、チュニジアのマトマタがマニアの中では有名なところですが、アブダビがスターウォーズの新しいシリーズ“フォースの覚醒”のロケ地になったのも驚きの一つでした。
ただ、SF映画ですから画面の中ではどこがアブダビなのかはわかりません。
主役のレイが最初に登場する「砂漠の星・ジャクー」部分のロケ地がアブダビから車で90分のところの世界最大級の砂漠・ルブアルハリ砂漠です。
このルブアルハリ砂漠はその高低差が大きいところで300mもあり、砂質はドバイの砂漠よりもピュアなものです。
撮影クルーは長期間、この砂漠に建つ「アナンタラ カスル アル サラブ」というデラックスリゾートに滞在して撮影をおこなっていました。
アナンタラのホテルのスタッフにフォースの覚醒の撮影に関するものがホテルに飾っていないのかを聞いたところ、そういった記念の写真などは一切飾っていないそうです。
スターウォーズの撮影はほとんどがスタジオなどを使ったCGですから、ロケ地巡りも限定されてしまいます。映画とは直接の関係ありませんが、クルーが滞在した「アナンタラ カスル アル サラブ」は砂漠の中にある本当に素敵なホテルですから、是非とも宿泊をして頂いて広大なルブアルハリ砂漠のピュアな砂を手で触れてみてはいかがでしょうか。
スターウォーズは世界中にマニアが多い映画です。この砂漠は広大ですので、どの辺で撮影したのかは分かりませんがその映画の雰囲気を感じれる数少ないロケ地でもあります。
セックス アンド ザ シティ2 ザ・ムービー
サラ ジェシカ パーカー演じるキャリーの親友4人が金持ちのアラブの王様からアブダビに招待されるという話し。(まとめすぎですか??)
アブダビまでの航空機は実際にはない「アブダビ航空」という設定で、宿泊ホテルも最高級の「エミレーツパレス」の設定ですが、すべてアブダビからの撮影許可が下りず、実際はモロッコの宮殿ホテルで撮影されたそうです。
そう、普通なら航空機もアブダビのフラッグキャリアであるエティハド航空がド~ンとスポンサーになって、ホテルも実際に豪華な宮殿風ホテルの「エミレーツパレス」を利用してアブダビ全体を世界中に伝える最高の舞台設定なのに、このころのアブダビはつれない感じだったようです。
じゃ、アブダビという設定ではなくても良かったのでは・・・と思うのですが、映画の中では「中東のお金持ちのアラブ人から招待される」ということで、”中東のお金持ち王子=アブダビ”のイメージだったんでしょうね、きっと。
一説には映画の“タイトル名”が問題で許可が下りなかったという方もいますが、実際は”なぜダメだった”のかは分かりません。
ただ、この映画が2010年上映でこの頃のアブダビは原油の値段も悪くなく、まだ積極的に観光誘致に力を入れてなかったので普通に映画の許可が下りなかったのかも知れません。(タイトル名も加味して)
ですから、この映画に出てくる風景はまった“アブダビ感”が残念ながらありません。
キャリーとミランダが2人でスーク(市場)へショッピングに出かけるシーンがありますが、あれはどう見てもアブダビではないような気がします。 市場の雰囲気は“モロッコ感”が満載ですので、おそらくはこれもモロッコで撮影されたものではないでしょうか。
アブダビには2018年7月25日に世界最大の屋内パークの「ワーナーブラザーズ アブダビ」がオープンしています。日本にはUSJ<ユニバーサル スタジオ ジャパン>がありますが、アブダビはそれのワーナーブラザーズ版の映画のテーマパークです。
入場料はAED295(日本円で約8,400円)とちょっとお高めですが、165万㎡の敷地は6つのセクションに分かれていて29の乗り物がありますので、思う存分1日中遊べますよ。
何より“屋内テーマパーク”ですから、4月から9月の夏時期でも暑さを気にせず遊べるのがいいですよね。
映画のテーマパークまでオープンしたので、これからは益々華やかな映画のロケ地になることは間違いのないところ。 近い将来、ロサンゼルスの「ロケ地巡り」のごとく、このUAEでもロケ地巡りが普通に出来るようになればいいですね!