旅行会社時代の添乗事件簿

その他

僕は現在、海外のホテルや車・ガイドなどを手配するツアーオペレーターで働いていますが、社会人のスタートは普通の旅行会社。

その旅行会社勤務時代には多くの海外の国と国内の観光地を添乗業務で訪れていました。

僕が行く添乗では結構な確率でいろいろな事が起こります。(トラブルではございません)

一度、当時の上司から「いっぺん、お祓い(おはらい)に行った方がええでぇ!」と真顔で言われて、結構ヘコんで「やっぱりお祓いに行った方がいいのか・・・」と真剣に思ったことを覚えています。

添乗を仕事にしている人なら、おそらく「そんなことは私にも経験あるわ!」と言われることばかりかも知れませんが、その時はそれなりに一生懸命仕事をしていたのでそれらは結構大変なことで今でも鮮明に覚えていることばかり。

このブログのメインは「ドバイ」ですが、せっかく覚えている事件なのでまずは2つの”JALの機内”で起こった出来事を書きます。(決して、事件ではないんですけどね。ボキャブラリーに欠けるので、これ以外の言葉が見つからなかった・・・)

添乗事件簿・その1:香港行きのJAL機内で病人が・・・。

古い話です。 中国に返還される前後は“香港”が結構なブームでした。僕も年に3回ほどは香港に添乗で行っていたのですが、この話はその中の香港行きのJAL機内で起こった事件です。

*機内イメージ

ある百貨店の外商顧客を対象にした募集ツアーで「JAL利用・香港4日間」の添乗でした。それは関西国際空港から香港行きのJAL中でそれは機内食の後に起こったお話です。

機内食のトレーをCAさんが片付けてくれた後、僕は席を立って機内後ろのトイレに行こうと歩きだした。そこに僕のツアーのお客様で75歳くらいの女性と出会い、僕はニコッと笑って話しかける。

ボク:「○○さん、お手洗いですか?あと1時間ほどで香港に到着しますからね」

お客様:「・・・」

返事がない。 返事がないというか、反応がまったくない・・・。このお客様はお手洗いから戻る途中だと思われるが、その途中の通路側の他のお客さんの座席に両手を添え、手すりにして立っている状態

僕は返事がなかったので、おかしいなぁ~と思ってちょっと顔をのぞき込むと、その老女のお客様は目をパカッと開けたまま明らかに気を失っている状態。

僕はその状態を見た瞬間に「あっ、これは死んでる」と思って、とりあえず気を一旦落ち着けて慌てることなく5mくらい先のベテランそうなCAさんのところに近づいた。

ボク:「あの~、僕のツアーのお客さんなんですけど、あそこで立ったまま気を失っているんです」

とそのお客さんの方を指さす。「もしかしたら、亡くなっているかもしれない」と続けてCAさんに小声で告げる。

ベテランCAさん:「えっ・・・」 

CAさんはそう言ってすぐにそのお客様を見た。

僕の話を聞いてその状況を理解したCAさんのそれからの動きが凄かった。素早く近くにいた若いCAさん2人を呼んでそのお客様の元に小走りで歩み寄り、顔を近づけて「お客様!」と声をかける。 もちろん、返事はない。

CAさんはその立っている横の真ん中の座席4名のお客さんを大急ぎでどかして、気を失っているお客様をその座席に寝かせる。

そこから、このCAさん3名による懸命の蘇生が始まった。(勝手だが、これは治療というより“蘇生”だと思う) 

お客様の服のボタンを緩めて、必死に蘇生を試みるCAさん。 その状況の中で、僕はジッと見守るしかなかったが、そのCAさんの手際はかなりのものだ。

そして、少したったころにお客様の手がピクリと動く。それを見た僕は「あっ、生き返った」と思って少しだけホッとしたのでした。

人間とはたいしたもので、それからそんなに時間がたっていないにもかかわらず、その倒れたお客様は普通の状態に戻りました。

僕はそのお客様に「香港に着いたら、現地のスタッフを呼びますのですぐにホテルへ行って休んで下さい」と告げると、お客様は「いえいえ、他のツアーの皆さんに迷惑をかけるので私も市内観光に行かせて頂きます」と穏やかに笑いながらおっしゃる。

それを聞いた僕は「ええっ~、勘弁してよ~。ホテルで養生して下さいよぉ~!」と思って、強くホテルで休むことをお勧めしたが、外商のお金持ちの上品なお客様は“人には迷惑をかけるまい”という気持ちが強く、意地でも皆と観光に行くと言う。

その気持ちがあまりにも強く、もちろん到着してからの香港市内観光はツアーに含まれているので、これ以上の無理強いは出来ないので僕はそれを了承した。(それ以降は普通に元気に行程を消化されました)

振り返って後で思ったことはまず「JALで良かった!」ということ。JALのCAさん達は普段からこういった時のためにトレーニングなどをちゃんとしているのだろう。 その蘇生作業は決して慌てることなく、どこか凜とした立ち振り舞いで頼もしくも思えた。

まぁ、JAL以外の航空会社のCAさんもこういった時のトレーニングは積んでおられると思うのですが、あまりにも完璧なやりとりだったので思わず「JALで良かった!」という思いになったのでした。

今でもその時のJALのCAさん達の処置にはもの凄く感謝しています。「いや~プロってすげ~なぁ~!」と思った出来事でございました。

(勝手に”死んでる”と思っただけで、もしかしたらそのお客様はただ気絶していただけなのかも知れない。でも、立ったまま固まって目を開いて気を失っていたら、普通はそう思いますよね)

添乗事件簿その2:北京から戻るJAL機のエンジンが爆発・・・。

これもたまたまJALで起こった、少し古い添乗での事件です。

*日本の翼JAL<イメージ>

それは「北京4日間」のツアーが滞りなく終了し、関西空港への帰国便のJALで起こりました。

北京から関西空港までの飛行時間は約4時間と30分。

機内食を食べた後の2時間ほど飛んだ頃、僕はツアー中はちょっと寝不足だったので目をつむって身体を休めていました。

座席は窓側から3つ目のC席(通路側)に座っていたのですが、まぶたを閉じているのにもかかわらず、突然左側の窓の方が“ピカッ!”と光ったのが分かった。 それもかなりの光の量。光ったと同時に「ボンッ!」とかなりの音も鳴ったような気がした。 実際には少し眠っていたので、感じた光や音は「あれ~、夢か??」とも思っていたところに、機長のアナウンスが聞こえてきました。

機長:「ええ~、今 1つのエンジンがトラブルで停止しました。誠に申し訳ございませんが北京へ引き返します。尚、飛行は残りのエンジンで問題ありませんのでご安心して下さい」

「ご安心下さい」と言われても、人間はこの状況で安心は出来ませんよね。

それを聞いた僕はすぐに左の窓側の方を見た。 2つあるエンジンの1つから煙が出ているのが見える。そう、間違いなく、閉じたまぶたから感じた光や“ボンッ”という音はこのエンジンが爆発した時のものだったのです。

僕がまず思ったことは「ええ~2時間も飛んだのに引き返すのぉ?」ということ。せっかく半分近くまできたのにまた引き返すということは、また海の上を飛んでいくということで「落ちたら海じゃん!」と素直に思う

陸だったらいいのか・・・と言う話しだが、”なんとなく”なのですが海は何もないから正直怖い。

機長の機内アナウンスを聞いて、ほぼ満席状態のお客さんの反応は思いっきり静かだった。誰もその状況をCAさんに聞いたり、パニクったりすることはない。しかし、静かながらもそれぞれの目はCAさんの動きをずっと追っている。

そう、乗客はCAさんが冷静なのかどうかを見て、それを安心材料にしようと思っているのだと思う。

もちろん、CAさんがバタバタし出したら乗客はパニックになるのかも知れない。

しかし、そこは訓練されたJALのCAさんで皆さん落ち着いておられます。CAは笑顔。その笑顔を見て「作り笑いとちゃうんかい!」と思いはしたが、それぞれ乗客の皆さんはそのCAさんの立ち振る舞いを見て安心をしたようです。

僕も一瞬「こういうときはやはり家族に手紙を残すべきか・・・?」と思ったが、誰も書いてないのでそれはやめた。

引き返した北京空港への着陸態勢に入る。 窓側のお客様が言うには滑走路の側には多くの消防車が待機をしているようだ。(これはあくまでも“念のため”の待機だと思いますが)

このエンジントラブルはもしかしたら僕たちが思うほど、航空会社の中ではたいしたことではないのかも知れませんが、滅多にこういうことを経験していない僕はちょっとハラハラドキドキ。

無事に北京空港に着陸したあとに、さらなる機内アナウンスではエンジンの修理が出来ないので、代替便が来るのを待たなければいけないということを機長さんは言っている。そして代替便は明日にならないと来ないらしく、本日はJALが用意したホテルに1泊することになったのです。

1泊のホテル代と、夕食と朝食の2回の食事代、そして各部屋10分の国際電話代はJALが負担してくれるみたいだ。 JALが用意したバスでホテルに到着すると、バンケットでJALとホテルのスタッフが手分けして部屋のキーを渡している。

ホテルは結構めちゃくちゃだった。僕は自分のお客様分の部屋のキーをもらって皆さんに渡したのですが、何名かのお客様は「キーで開けて部屋に入ったら、すでに誰かいたぞぉ」と戻ってきた。

ホテルはかなりパニクっているようです。 

でもこれは仕方ないですね。一度に多くの宿泊客が同時にチェックインしたらバタつきますよ、それは。

僕は自分のお客様に落ち着いて少し待ってもらうように伝えて、ホテルのスタッフと一緒に部屋のチェックにいった。

幸いに僕のツアーのお客様は皆様良い方ばかりでわ~わ~言うことはなく、みんなでホテルのレストランで夕食を共にし、北京ツアーの感想やJALのエンジン爆発時の心境などを言い合いながら楽しく過ごすことが出来ました。

飛行機での事故は陸で“車で事故に遭う”より確率は低いと聞きますが、それでもやっぱり飛行機はなんとなくですが、僕は怖く感じております。 

ドバイへ行くのにエミレーツ航空の世界一大きい2階建て航空機の「エアバス380」に何度か乗ったことがあります。2階建ての超大型飛行機が400名以上の客と荷物を載せて10時間以上も飛ぶのが今でも信じられない。(まぁ、100名くらいの小型飛行機でも飛ぶのは信じられないですけどね)

そんな気の小っちゃい大人なのですが、飛行機に乗る機会の多い“旅行業界”で働いている以上は克服しないといけないと思う今日この頃です。(まだ、克服してないかよぉ~って話しですが・・・)

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