ガイド特訓! ドバイ市内観光編

ドバイ

【ドバイ滞在2日目僕を待っているお客様のために!】

迎えに来てくれた女パイセンと車でドバイ市内観光巡る。 “巡る”と言っても別に観光する訳でもない。

それはあくまでも明日からのガイドデビューに対しての特訓。 そう、昨日の晩にドバイについて、明日からガイドとして働かなければいけないのです。

女パイセンは車の免許がないから、インド人ドライバーが運転するツアー用の車でシャルジャからドバイへ向かう。

《ジュメイラビーチ》

女パイセン:「ここがジュメイラビーチ。 あそこにでっかい建物があるでしょう。あれが通称7星ホテルと言われている超高級ホテルの「バージュ・アル・アラブ」

確かにデカい。ちょっと海に入ったところに建っていて“私、すごいでしょう~!”って主張をしているようなたたずまいのホテルだ。このホテルはヨットの帆のような形をしている。 

このホテルの手前に柔らかな曲線が特徴のジュメイラビーチホテルが建っている。

女パイセン:「手前のホテルがジュメイラビーチホテルで”波”を表してるのよ。そしてバージュ・アル・アラブがその波に浮かぶ”ヨット”のイメージ!」

ボク:「へぇ~」 ガイドブックはそんなイメージ的なことは書いてない。

女パイセン:「オッケー? じゃ、次行こう!」 クルッと回って車に戻ろうとする彼女。

えっ、これで終わりなの・・・。 特訓じゃないの・・・。 明日、僕が1人でここをお客様に案内するんですよね??

勇気を振り絞って僕は女パイセンに聞く。

ボク:「なんか、もっとお客様に伝えるような“これっ!”っていう話し無いですかね?」

女パイセン:「特に無いよ~。だって、見たままじゃん!みんな、写真を撮るだけだから。 あのさぁ~、あたし昼からガイドの仕事があるから時間がないのよ。 だから、早く行くよぉ~」

ボク:「そうですか・・・」 それ以上の返す言葉が見つからなかった。

今でもこのジュメイラビーチは「ドバイ市内観光」の定番の一つだ。この頃のジュメイラビーチは観光客もまだまだ少なく、ビーチで泳ぐ人も少なかったけど、今では多くの観光客がこのビーチでリゾートライフを楽しんでいる。

車に戻ると僕は持参したメモに書いた。“ジュメイラビーチは写真を撮るだけのところ”と。

*今も昔も変わらないジュメイラビーチ

《ジュメイラモスク》

ジュメイラビーチから車で20分ほど行ったところにジュメイラモスクがある。ジュメイラビーチからはほぼまっすぐな道路で、到着する1分前くらいに立派なモスクの塔(ミナレット)が見えてくる。

車はモスクの目の前にある一般の青空駐車場に停める。 車を降りるとジュメイラモスクの全体が見えた。 とても綺麗なモスクだ。

女パイセン:「これがドバイで一番美しいと言われているジュメイラモスクよ。ここで写真タイム。時間は10分~15分くらいかなぁ~」 携帯をさわりながらパイセンは説明してくれた。

その後の説明を待つボク。 

女パイセン:「じゃ、次行こうっか!」

・・・。僕は無言でパイセンの顔を見た。 

ドバイ到着の2日後で彼女とはさっき出会ったばかりで本当に恐縮だが、僕は自然と彼女を睨みつけてしまった。 彼女も僕の視線に気づいたようで、少し下を向いたが顔は半笑いだぁ。

女パイセン:「だって何もないんだもん!」

そう言って彼女は車に乗り込む。

はいはい、わかりましたよ。自分でガイドブックの内容を思い出して説明に足しますよ。やりゃ~いいんでしょう、やりゃ! これが僕がドバイで吹っ切れた最初の瞬間だった。

このジュメイラモスクは現在もドバイ市内観光の定番。

1979年に完成したイスラム教の礼拝堂で一度に約1200人が同時に礼拝できる「ドバイで最も美しいモスク」と言われている。2本のミナレットと中央のドームのバランスがとても美しい。 確かに彼女の説明にウソはない。

この時代の定番のドバイ市内観光では、ガイドやドライバー達が”スカイライン“と言うクリーク沿い(町の中を流れる川)に下車し、「前のビルが日本で言うNTTです」などと説明をして、クリーク沿いの雰囲気を楽しんで頂いていたのですが、今はもう行っていない。

まぁ、車でこの横はしゅちゅう通るので車中からこの風景は楽しんで頂けますしね。

*ドバイで一番美しいと言われている”ジュメイラモスク”

《バスタキア地区》

ジュメイラモスクから車でさらに町中に向けて車を走らすこと約20分。ドバイの古いアラブ様式の家(建物)立ち並ぶ旧市街の観光スポット。 家の上に四方に穴が空いている“風の塔”と呼ばれるものが着いているのが特徴だ。 

車の助手席に座るパイセンガ後ろの僕に優しく説明する。

女パイセン:「ここは車窓だから~。 40年ほど前に遊牧民族がこのクリーク沿いのこの場所に住みだしたのぉ。 家の上に四角くて穴が空いているの見えるでしょう。あれは“風の塔”って言って、いわゆる自然のクーラーね。あの塔の下にリビングがあるの」

今回はかなり長めに説明をしてくれたような気がする。 僕は「車窓なら、これで大丈夫か」と心の中で頷く。

またいつかこのバスタキア地区(今はアルファヒディ歴史地区と書くガイドブックが多い)を語りたいと思う。 なぜなら、このあたりは3~4年前頃から大きく進化したから。

いわゆる“インスタ映え”する場所になっています。 女性の方ならここはすごく好きだと思う。いや、男性ももちろん老若男女が喜ぶ場所に生まれ変わりました。

すぐ近くに「アル・シーフ」というアラブ風のお洒落なニュースポットが出来て、その中にあるスターバックスは雰囲気が最高!

ドバイ市内観光の特訓は続く。

バスタキアを車窓で通り過ぎてすぐに「ドバイ博物館」が見えてくる。ここは唯一の“入場施設”で女パイセンが僕のチケットを窓口で買ってくれて一緒に中に入る。

*バスタキア地区の旧市街・風の塔

《ドバイ博物館》

中には昔のアラブ人が住んでいた家を再現したものがある。 そう、屋根にはあの風の塔が付いていて僕はその塔の真下のリビングあたる場所に行く。 

そのリビングではチロッ~と風を感じる。 アラブの先人達の知恵は素晴らしい、感動する。

観光では40分から50分ほど見学するいい博物館で、見応えは十分な博物館だと思う。あれから20年たった今でもこのドバイ博物館はまったく変わらない。 

新しく出来た「ドバイフレーム」の中にも“過去のドバイ”と“未来のドバイ”の博物館的なものがあって、ここを見た人は「ドバイ博物館は見なくてもいいんじゃね」という人もいるが、僕はそうは思わない。

通常、40分~50分の見学時間を取るドバイ博物館を女パイセンはとても優しく10分ちょっと説明をしてくれた。 

途中で彼女はチラッと時計を見る。 やはり時間を気にして急いでいるようだ。

館内は真っ暗でメモなんかする事も出来ない。 ここはパイセンが説明してくれたことを脳裏に焼き付けて覚えていくしかない。

《アブラ船/渡し船》

急ぎ足で車に乗って走ること4分。 

ドバイクリーク沿いの船乗り場についた。ここから昔ながらの渡し船に乗る。ドバイでは「アブラ船」と呼ばれている。 

このアブラ船は20名乗りで満席になるまで出発しない。いわゆる混載の水上タクシーだ。

女パイセンはすごく急いでいるので、船頭に20人分のお金を払って僕たち二人だけを乗せて船は出発した。(今は、乗り場で“混載”と“チャーター”のレーンが分かれていて“チャーター”の方に並べばすぐに出発してくれる。船代は1人AED1なので20名分でAED20となる。(AED20は日本円で約600円)

*アブラ船からのドバイ旧市街の風景

《スパイス&ゴールドスーク》

アブラ船に乗ること約5分。 対岸にあるスパイススーク前の船乗り場に到着する。

船着き場とスパイススークの間にはバニヤスロードというちょっと大きい道路を渡らなければいけない。

この道路の信号が青から赤に変わるのがメッチャ早い。これは20年前も今も同じ。

お年寄りや障害者の方のことをまったく考えてない。 

一度、ドバイ政府にこのことを投書しようかなぁ、とも思ったが出す部署も分からないので今もほったらかし。(まぁ、こんな日本人の意見を聞くとも思えませんしね)

スパイス屋さんが並ぶアーケードに入る。各店の前には多くのイラン人がいて、僕たちを目にした途端「なか~た~!(中田ヒデのこと)」や「カズ~!カズ~!」(キング カズのこと)といっせいに僕たちに言ってくる!

彼たちは知っている日本語を僕たちにしゃべりたいだけで、特に危険はないようだ。これは20年たった今でも変わらない。「そんなのかんけいねぇ~!」(ちょっと古い)や僕がウケたところでは「あると思います!」と天津木村のギャグを真顔で人指を前に立てて言うイラン人。

平和だなぁ~ドバイ。(ドバイは本当に平和なんですよ。治安の順位はちょっと古いですけど、世界国際フォーラムの2017年「国の治安度ランキング」で1位のフィンランドに次いでアラブ首長国連邦は第2位の治安の良さです。正確な順位は忘れたけど、日本は26位くらい)

1軒のスパイス屋さんの中に入った。 女パイセンは店主と話しをしながら店の棚にあるピスタチオを勝手に取りだし、5つほどのピスタチを僕に渡す。

女パイセン:「あげる~。美味しいよ、ここのピスタチオ。癖になっちゃうのよ」

そう言ってポリポリと店主の話半分で笑みを浮かべながらポリポリ食べる彼女。

急いでるんじゃないのか・・・。 と思いつつもそのピスタチオを口に入れる。確かに美味しい。

「癖になっちゃうのよ~!」とも言った。 確かに本当の話だ。

まぁ、そんなことはどうでもいいやと思ってスパイス屋の店主には「明日も客を連れてくるから、説明してね」とだけ伝えてゴールドスークに向かう。

*スパイススークにはスパイス屋さんが10軒以上並んでいます。

スパイススークから歩くこと約5分。 金のお店がたくさん並ぶゴールドスークに到着。

ゴールドスークのアーケードの中には数えたことはないけど、150軒以上のゴールドショップが並ぶ。

今ある「ギネス公認・世界一大きい指輪」はこの時代はまだ無い。 

*現在、ゴールドスークにある「世界一大きい指輪」

そのアーケードを歩きながらパイセンが説明してくれる。

女パイセン:「ここのお店は金はもちろん買えるけど、持ってきた金を売ることも出来るのぉ」

説明は以上だった。 スパイス屋さんでピスタチオの無駄な試食タイムがあったために、さらに彼女は急いでいるような感じだ。 <自由な人だなぁ~、この人>

海外で働く人はイチイチ何かを深く考えていてはやっていけないのかもしれない。彼女は20年たった今でも海外で暮らしていると人伝えに聞いた。それは南の島らしい。 女パイセン、元気でやっているのかぁ~と思う今日この頃です。

*ゴールドスークのアーケード
*ゴールドスークのお店

以上で「ドバイ市内観光」のガイド研修は終わり。

とても残念だが、この研修の知識を持って”ガイドデビュー”をしなければいけない。そう、明日から独り立ち・・・。チョー不安だ。

この後はエミレーツタワーホテルに隣接するモールで少しのショッピングタイムを取るだけらしい。

もちろん、この状態で明日ドバイを楽しみにされているハネムーンのお客様を、ドバイ観光にご案内することは出来ない。

それは強く思った。 

なので、午後から一人になった僕はオフィスに戻って観光の復習とガイドブックを読み返しながら“ガイディング・メモ”を仕上げるのであった。

この1ヶ月間のドバイ滞在の中で、個人旅行できているハネムーナーを5組ほどドバイ市内観光にご案内しただろうか。

個人のお客とは別に大きなグループがあったので、そのグループでの記憶はあるのですが、ハネムーナーの皆様をどのようにご案内したのかはまったく覚えていない。

唯一覚えているのは、このハネムーナー達は観光途中で必ずボクに「もうドバイは長いんですか~?」と聞いてくること。

「ほぼ、皆さんと同じくらいですよ!」とは口が裂けても言えない。 

それを知られると、「金返せ!」と言われるのは目に見えているので、僕は必死で観光の施設の内容とそれにそれに関係する雑学も一緒に勉強した。 

そして、僕は「ドバイはまだ2年ほどなんですぅ!」と言って顔を伏せる。もうこれ以上の質問は受け付けない。そう、ウソはつきたくないんだよぉ・・・。*これはお客様を不安にさせないためのやむを得ないウソです。仕方なかった・・・。

幸いに振り返ると、その場でお叱りを受けることもなく、もちろん日本に戻って旅行会社さん経由で「最低なガイドさんでした」とクレームも受けることもなかった。

でも今、この時に僕がガイドをしたハネムーナーの方々やグループの皆さんに対して本当に申し訳無かったと思う。でもすべてのお客様に“ベスト”を尽くしたことは間違いない。

ただ少し今思うことは「今ならあの時の倍以上、いや3~5倍以上のご案内が出来て”良い思い出”を持って帰って頂いたのになぁ」ということ。

これが僕とドバイとの出会いだ。 そう、原点。

僕はこの1ヶ月の間、死ぬかと思うほど働いた。ウソと思われるかも知れないが休みは1日もなく、睡眠時間も3時間以上の日はなかった。 酷いときは“睡眠1時間”が3日連続の時もあった。

“睡眠1時間”の時は横になっての睡眠ではなく、ホテルや空港の椅子に座って“1時間ほど”目をつむる・・・感じ。

(だから、汚い滞在中のホテルの部屋に戻ったのは3~4回ほど。それも着替えに戻る程度)

昔、テレビで人気絶頂の頃のピンクレディーがドキュメント番組で「毎日睡眠が1~3時間ほどです」と言っているのを見た。 僕は「1~3時間って、そんなこと出来るわけがないやんか!」と突っ込んだことを思い出す。 実際に僕はたった“1ヶ月間だけ”だが、その状態を経験した。

そして、その時は“死ぬ”と思ったが実際に死んではいないので「人間って強いねんなぁ~」と発見した時でもあった。

中身が濃いドバイでの1ヶ月間の滞在を経験して、今の僕がある。 今もドバイに滞在している日本人はもとより、インド人やパキスタン人、エジプト人、スリランカ人、フィリピン人などのみんなとは立場上は仕事上の関係だが、僕はある意味みんなを“戦友”だと思っている。

これからもドバイとは関わっていけたら幸せだ。

なので、ドバイのホテルやレストラン、観光、お土産などの知りゆる全てを今後こまめに書きたいと思っています。宜しければ今後もご覧下さい

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